空の神衣
 そして、闇珠もそのことには気づいていた。

 本来なら津也の身体能力を飛躍的に高めるはずの自分が、逆に枷になっている。

 闇珠は必死に津也と同調しようとするが、存在そのものが変異しかけているためか思うにまかせない。

 闇珠は苦悩していた。

 同調を解除すれば、津也は少なくとも身体能力を存分に発揮できる。

 だが、闇珠が力を送らなければたちどころに消耗してしまうだろう。

(このままじゃ、あといくらもまともに戦えないわ。どうすれば…)

 その時ふと、闇珠はあることに気付いた。

 あるのだ。

 今の闇珠が、津也に本来の能力を発揮させる方法が。

(でも…津也は絶対にダメだって言うよね…)

 そうこうする間にも、
アガートラームは雷光を繰り出す。

「そらそら、どうした。全く勢いがないではないか」

 勝ち誇ったような高笑いをあげる。

「つくづく、状況が分からんヤツだな…」

 半ば呆れながら、津也は回避を諦めて雷光を撃墜する。

 更に残った黒い力弾が束になって虚空を走り、アガートラームに迫る。

「そんなもの、私には効かんぞ」

 軽く剣を一閃しただけで力弾は掻き消される。
< 233 / 264 >

この作品をシェア

pagetop