空の神衣
 アガートラームは、激しく混乱していた。

 これまでに迎えた勝者は、例外なく自分に対して激情を向けてきた。

 だが、津也は至って冷静にアガートラームを倒そうとしている。

 いかに自分の子孫とはいえ、サバイバーであることに変わりはない。

 それなのに、津也の振る舞いはあまりに異質であった。

 これは、アガートラームの望む展開ではない。

「貴様、私を誰だと思っているのだ。天の加護を受けたこのアガートラームに、貴様ごときが勝てると思っているのか」

 露骨に憎悪を滲ませた表情で睨むアガートラームに、津也は平然と答える。

「勝てるさ」

 ガアァン

 再び銃声。

「あんたは特別な存在なんかじゃない。後悔と無念を抱えて死んでも死にきれない、ただの人間なんだよ」

 パキイィン

 言い終えると同時に澄んだ音が響き、アガートラームの左肩が弾けた。

 先の攻撃で傷ついていた肩当てが砕けたのだ。

「うおおおぉっ」

 ダメージこそないが、アガートラームは津也に主導権を握られている事実に思わず声をあげる。

「ばかな…こんな、ばかなことがあるものかっ」
< 243 / 264 >

この作品をシェア

pagetop