空の神衣
「まだ分からないのか。あんたの生き続けようとする執念は誰もが少なからず持ってるんだ」

 津也は胸元からカードを取り出す。

「当たり前の願いのために戦うあんたは、特別でも何でもない」

「黙れっ」

 やっとの思いで津也を見返し、アガートラームは震える手で剣を構えようとする。

 が、

 ガラアアァン

 動揺したためか、振るい慣れたはずの剣を取り落としてしまう。

「あんたが初めに言ったんだぜ。生きることに理由はいらないって」

 アガートラームの胸元に狙いをつけたまま、津也は諭すように語る。

「理屈じゃない。生き続けたい。それでいいじゃないか」

「ええい黙れっ」

 同情されたと思ったのか、アガートラームは声を荒げて剣を拾う。

「言動に理由を求められぬなど、選ばれた者にはあってはならぬ。なぜ貴様は私に平伏せんのだ」

 切っ先を突きつける。

 しかし、津也は身じろぎひとつせずそれを見返す。

「選ばれたのがあんただけなら、敬いもしただろうさ。だけどな、異能者はあんただけじゃないんだよ」

 いかにも人間らしい言動に、津也にはアガートラームが当初のような強大な存在にはとても見えなくなっていた。
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