空の神衣
「ダラダラやるのは嫌いなんだ。さっさとケリをつけようぜ」

 カードを頭上に放り上げると、両手の銃が黒い渦をまとう。

「ここからは、本気で出し惜しみなしだ」

 ジャキィン

 撃鉄を起こす。

「来いよ。ナメてかかってたら、命はないぜ」

「おのれ…おのれっ」

 構えはしたものの、アガートラームは剣を繰り出せずにいた。

 無造作に見える津也の構えに、全く隙が見当たらないのだ。

「うっ…むうっ…」

 その迷いが顕現したように、消えていた刀身が現れる。

 無論、アガートラームの意思には反している。

「くっ…道具の分際で私に盾突くかっ」

 刀身に手をかざすが、何の変化も起きない。

 そんなアガートラームの狼狽ぶりに、津也は悲しみさえ覚えていた。

 幾多の苦痛を越えて来て、最後に対戦する相手がこんな普通の人間なのか。

 不毛な戦いを企てた首謀者は非道で強大でなくては、道半ばで倒れたシオン達は立つ瀬がないではないか。

 だが。

 考えてみれば、それも津也が描いたイメージである。

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