空の神衣
「そういえば、あいつが普通の人間だと言ったのは、俺だったな」

 気づかれないよう苦笑すると、津也はアガートラームの右肩を狙い引き金を引く。

 黒い渦を引いて飛ぶ力弾は、狙いを違えることなく右の肩当てを撃ち抜く。

 パキィィン

 陶器が弾けるような音をたて、鎧が砕ける。

「む…うっ…」

 アガートラームはしばらく津也を見据えると、構えを解き剣を下ろす。

「不愉快だ」

 言葉とは裏腹に、憑き物が落ちたようなさばけた表情で言う。

「不愉快だが、認めねばなるまい。貴様はおそらく私より強くなっているのだろう」

「ギブアップするかい」

 冗談めかして津也が言うと、笑って首を振る。

「ここで降参しては、打ち伏せてきた者達に対して示しがつかん」

 再び切っ先を上げ、構えをとる。

「王たるもの、力を残して軍門に下るは愚の骨頂というものだ」

 その仕草には、力強さが蘇っていた。

「そうこないとな。これでようやく勝負になる」

「勝った気でいるな。そうはいかんぞっ」

 一閃、雷光を放つ。

「それはこっちの台詞…だよっ」

 ガアァン

 ガアァン

 引き金を引く。

 光と闇が交錯して、弾けて消える。

「これも弾くか」

 分かっていたと言いたげな口ぶりで呟くと、アガートラームは津也の懐に飛び込もうと走る。

「それも、通じない!」

 気合いと共に、たて続けに力弾を撃ち出す。
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