空の神衣
「来るがよい」

 津也の視線を堂々と受け止め、アガートラームも剣を構える。

「私も、最大の技で応えてやろう」

 その腕が、微かに震えている。

 こちらも限界が近い。

(共に戦う、か。羨ましいものだ)

 アガートラームは、津也と傍らの二人を眩しそうに見る。

「王である私が持ち得ぬものを、この男はいくつ持っているのだろうな」

 物言わぬ剣に語りかけるが、もちろん答えはしない。

「安物の芝居なら、ここで剣が何か言うところなのだろうな」

 苦笑するアガートラームの額に、じわりと汗が滲む。

 身を守る鎧を捨てたために、ダメージが体を蝕んでいるのだ。

「無様を晒してなるか。王の威厳、とくと見るがよい」

 半身で踏み出し、担ぐように剣を構える。

 アガートラームの意思に応えるように、刀身が青白く光る。

「最大最強の雷光、受けてみよ!」

 鋭い呼気を発すると、津也に向けて切っ先を突き出す。

 青白い雷光がその先端からほとばしり、急速に膨れ上がる。

「若き戦士よ、貴様の負けだ!」

 それは、祈りに近い叫びであった。

 倒れてくれ、と。
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