空の神衣
「封印したってことは、このカードはもう使えないのか」

 津也は手にしたカードを複雑な思いで見る。

『力を発揮することはなくとも、貴様と傍の者との絆が失われるわけではあるまい』

 アガートラームの言う通りではある。

 確かに、津也は影縫とも闇珠とも、力だけで繋がっていたのではない。

 ひとつ頷くと、津也はカードを胸ポケットにしまう。

「そうだな。待ち惚けくわせると後が面倒だし、そろそろ帰るか」

 津也は一歩踏み出そうとして、ふと振り返る。

「もしかしたら、あんたは本当に特別な存在だったのかもしれないな、王様」

 誰かに力を与えられたのではなく、全てアガートラーム自身が作り出したのではないか。

 戦いそのものも。

 隔絶した空間も。

 人知を超えた武器も。

 津也には、なぜかそう思えてならない。

『私は王であるぞ』

 アガートラームは高笑いした。

『王が特別でないわけがあるまい。そして、私の子孫である貴様も特別なのだ』

「俺が?」

 驚く津也に、王はそれ以上語ろうとしない。

「普通で、いいんだけどなあ…」

 津也は頭を掻く。

「まあ、とりあえず今は疲れたな」

 津也は襟を正すと、アガートラームに向き直り胸の前で拳を合わせる。

「もう悪さはするなよ」

 やはり、一人で残していくのは不安だ。

『気になるなら、魂を半分置いて行け』

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