空の神衣
「ふう…」

 ややあって、ようやく息をつく。

『やはり、難しいものであった』

 こちらも息をつき、アガートラームは振り抜いた剣を下ろす。

『きれいに半分、というわけにはいかなんだ』

「斬りすぎた、てか」

 膝をつきそうになりながら、津也はなんとか持ちたえた。

『かなり、な。それでも四半世紀は生きられるであろう』

 再び剣を足元に突き立てると、王は帰路を急かす。

『いつまでも王の手をわずらわせるでない。貴様には待つ者がおろうが』

 その傍らに、津也と瓜二つの影が佇む。

「監視は任せた」

 声をかける。

 すると、ありえない答えが返ってくる。

『確かに引き受けたよ、兄さん』

「お前…徹也か?」

 それは、生まれることなく消えた弟。
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