空の神衣
「おっちゃん、ごっつうええ腕しとるやん。役者なったらモテるで」

 額の汗を拭いながら晶が言うと、

「晶と言ったか。君の方こそ、とんでもない牙を隠しているようだな」

 ミシェルもシルクハットを被りなおして言う。

 見る者がいれば、奇妙な構図であった。

 正装のミシェルに対して、晶は平服だ。

 カッターシャツにジーンズ、バスケットシューズという若者の服装。

 シャツの襟には、晶が自分で「53」と赤く刺繍をしている。

「ナニワのオナゴ、なめんとってや」

 内心の不安を隠し、晶は不敵に笑う。
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