ひと夏の片思い
まだ夕方だというのに開店したての居酒屋へ私たちは入った。
「山崎です」
「雅也っす」
千冬と話してた男が言った。近くで見るとイケメンだ。
「千冬です」
「夏樹です」
「オレらはもう知ってるけどな」雅也が千冬に言った。千冬はさも可笑しそうにケタケタ笑った。
ハイ、ハイ、ハイ。解りました。千冬はすっかり雅也がお気になんだ。
私は仕方なく山崎と世間話を始めた。
「大学どこ?」
「A医大」
私は山崎を見た。超頭いいんだ。山崎はきょとんとしていた。
「君は?」
私は恥ずかしくて顔から火が出そうだった。おバカな自分を呪った。
「M女」
私は消え入りそうな声で言った。
「あ、そ」
山崎は気にも留めてない風だった。
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