ひと夏の片思い
「なんで苗字言ったの?みんな名前なのに」私は話題を変えた。店員が軽快に注文した酎ハイを持って来た。
「あんまり呼ばれないから」
山崎は生中を飲んでいた。隣で雅也が千冬に
「彼いるの?」と聞いていた。
「いないよ〜」千冬の甘い声が聞こえてきた。
「君ら、タイプ違うよね」
山崎が言った。
「そうよね。千冬はすごくかわいいし…」
「そお?」
山崎が話を遮った。「全然思わね」
私たちの会話が止まった。私は黙々と飲む山崎の横顔を見ていた。
「下の名前教えてよ」
「ともひさ」
ともひさ
この時から私はもう恋をしてたのかもしれない。
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