Happy days
「え?あぁ………



ちょっと忘れ物しちゃって♪」




「忘れ物?」





「うん、えっと………」






啓太はそう言うと、
部室の棚をあさくりはじめた。


俺達はその様子を黙って見つめる



すると………





「たしか、このへんに…



………あったぁ!!」





変声期を過ぎたとは思えない
幼さの残る声を上げながら
啓太は右手を突き上げた。


その手には何かが握られている。







「………本?」




「うん♪


この本、すごくおもしろいんだよねぇ♪」






………それを取る為に
何故、8時前に来なくては
いけないのだろう…?






「今、いいところなんだよね♪



主人公が記憶を取り戻して
再びマウンドに…『もういい』」






長年の付き合いで分かる。

こいつは昔からこの手の話は
やたらと話したがるやつだった。


黙って聞いてればそれは
間違いなく地獄………



何時間でも話し続けるだろう。





「え〜…


私、ちょっと聞きたかったなぁ」






――何も知らないからそう思うんだ…






俺はため息をつきながら
啓太を叩いた。


理由は何となく。
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