Happy days
「………ふん。

用が済んだのなら早く帰れ。
俺は忙しいんでな」



「言われなくても帰る。

行くぞ、皐月」



「え、あ、う…うん」




抱きしめていた腕を離すと、そのまま私の手を握り、その手を引くようにして扉に向かった。



結局、私は最後までオロオロしていただけの気がする。






―――――――――――――――







バタン!



扉が閉まり、それを合図にするようにしてイスに座る。



そして、おもむろにデスクの引き出しから一枚の写真を取り出した。



そこには、若い夫婦、そして、小さな兄妹の姿があった。




「惚れた女も守れないで、社員全員を守れんのかよ………か」




そして、少し寂しそうに微笑み、写真の若い女性の顔をなでる。




「そうだな、真弓………」
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