【短】『夢幻華 番外編』偽りの恋人
「最初に言っとくけど、俺、思っているほど優しくないよ?」
「先輩は誰にでも優しいですよ。悪く思っている人はこの学校にいないんじゃないですか?」
それが仮面だって。
学校で誰にでも愛想よく笑っているのは表向き。
だって、龍也は年中男女問わずツンケンしてるし…
響は相変わらず、ある種の男にはガンを飛ばし、纏わり付く女には一線引いているし…
ビケトリなんて言われている俺たち3人が、全員ピリピリしてちゃ周囲の迷惑だっつーの。
だから、必然的に俺がヘラヘラと八方美人の笑顔を振りまいて、バランスを取ってるって事、実は龍也も響も気付いていないかもしれない。
考えてみたら空しい…
っつーか。俺って貧乏くじ?
おかげで、学校じゃ王子様扱い。
天使のような笑顔とか言われても、誰が嬉しいっつーんだよ。
あいつら曰く
『子どもの頃の暁は本当に天使みたいだったし、嘘でも無いぜ。いいんじゃね?』
って事だが、冗談じゃねぇ。
実際の俺には黒い羽がついていると思うぜ?