【短】『夢幻華 番外編』偽りの恋人
俺の世界は全て杏中心に回っていて、彼女以外の女なんて存在しないのと同じなのに…
わかってる。
こんな付き合いで、暫く痛みは誤魔化せても、心の乾きは増していくばかりだって事は。
わかっているけれど……
苦しくて、辛くて、自分を支えていられない…
杏が愛しくて、欲しくて、狂ってしまいそうだ。
この腕に抱きしめて、誰にも触れさせたくない。
俺だけを見て、俺だけを愛させたい。
その唇に朝も夜も、甘い口付けを落して
ひと時も放さず愛していたい
幼い少女にそれを告げることは出来なくて…
身体の中で暴れだす激情を、無理やり閉じ込める。
杏の前では兄の仮面を付け微笑んで
不実な恋を繰り返し、偽りの恋人に愛しい人の影を求める
杏…愛している
いつかお前は俺を兄としてではなく、男としてみてくれるだろうか。
早く大人になれ
きっと…俺を愛させてみせるから…
++ Fin ++