ちびねこ物語
ジッ・・・・・・・
ファスナーを閉じる音がして、
僕は中で身動きが取れなくなった。
身体から滴り落ちていた雨水は、すっか
りタオルやジャージに吸われ、
少しだけ身体が軽くなったような気がし
た。
がたがた・・・という
自転車の軽い振動に揺られ、僕は冷えた
身体の力を抜き、再びゆっくり目を閉じ
た。
冷たい雨や風をしのげるのは、ありがた
かったけど、
これから僕はどこへ連れて行かれるのか
” 茶色い髪 ”は、どこへ行こうとし
ているのか・・・・・・
さっきのままでいるよりは、ずっとマシ
かもしれないな・・・・・
どこかで嗅いだことのあるような、
汗の匂いを嗅ぎながら、ぼうっとした頭
で考えた。