ちびねこ物語
あの日以来、茶パツはますますケイタイ

が手放せなくなった。

まるで身体の一部だ。

食事中はもちろん、トイレにも、お風呂

にも、どこにだって連れて行く。

ちょっと、置き場所を間違えただけで、

パニックになって探し回るし、僕ら家族

にも八つ当たりっぽい。

まるで、画面の”あいつ”が、そのちっ

ちゃな物体の中に住んでいるんじゃない

かっていうぐらい、穴があくほど見つめ

ている。

話しかけるのもたまにじゃない、もうい

つものこと。なんか病気っぽくない?


ママも最初は、

「話し相手がいていいわねぇ」

なんてからかっていたけど、それもその

うち、耳にも入らなくなってきたみたい。

誰かが近くにいるのを察すると、顔も上

げず、すぐに席を立って部屋にこもるか

らママもすっかり、あきらめている。



着信音だって変わった。

あいつの時だけ”ウェディング・マーチ”

だ。よくやるよ、まったく。
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