ちびねこ物語
っていないようだ。



ママの手足は、ところどころ赤く染まり、

豊かに結い上げられた髪も、すっかり乱

れ落ち、服もあの日からすっと来たまま

同じものだ。

一晩中、徘徊するママの後ろで、ママの

欠片を拾い集めるパパ。


「よくある仕事のトラブルだから・・・」


聞こえていてもいなくても、パパは同じ

言葉を繰り返す。


日曜、祝日も家にいなかったパパ。

家族にテレパシーを送っていたのは、茶

パツだけじゃなかったらしい。


「俺の気持ちをママに伝えてくれ。
 
 ママに”ごめん”と言ってくれ。」


僕は猫語しかダメなのに、パパは僕に向

かって真剣に言う。



誰もものを言わなくなった家は、一日、

一日が異様に長く感じられた。

僕は、いつものところで、いつものよう

に、鳥のさえずりに訊ねていた。

いつもとなにが違うんだろうと。


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