帰り道・迷い道
亮ちゃんは営業の仕事をしている。

外資系の薬品会社の営業で、毎日お医者さまの所に行って、薬をおいてもらう交渉をしているらしい。毎日勉強らしい。

あたしには到底無理。

大学でもテストの度泣きながら勉強してたのに、
仕事してまで勉強なんて。

大学を出て全く違う方向にいった事で分かるだろうが、
とにかく理系から離れたかった。
あの化学反応式や白衣から
一刻も早く抜け出したかった。

でも亮ちゃんと出会ったから、大学生活は輝いてたよ。

大学卒業して1年がたって、亮ちゃんの仕事の研修が終わると同時に
あたし達は一緒に住み始めた。

亮ちゃんが来いって言ってくれたからだし、
最近は具体的に結婚の話をしてるから、
多分あたしは亮ちゃんと一緒になって
亮ちゃんの子供を産んで
幸せな家庭を作っていくんだろうな。

仕事中でも結婚の事を考えたら周りがピンク色になる。


なんて幸せなんだろうか。

でも

たまによぎる
この漠然とした不安はなんだろう。

もし亮ちゃんがあたしの前からいなくなった時の不安だろうか。

大好きな人がいなくなった時の辛さとか
そういうものが、なぜかあたしは分かる気がする。

今までそんな辛さ、経験した事無いはずなのに
なんでだろう。

あの泡みたいに消えていった夢と一緒で

なにか、
私の中のなにかが、
それを知ってる気がする。

でもそれが何かを考えた時、
いつも胸が圧迫されたみたいに苦しくなる。

だから

考えるのをやめる。

いつもこの
繰り返し。
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

最初に愛した、あなたの記憶

総文字数/3,673

恋愛(その他)10ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop