おじいさんと泥棒


かといって本人に聞くわけにはいかない。


何故泥棒を?


などと聞いてしまったら今までしてきた知らないふりが全て無駄になってしまう。


夕食の際にでも遠まわしに聞いてみようか。


私は再びはたきを振った。

椅子の上に乗ってシャンデリアをはたく。

すると若者が真っ青な顔をして私のもとへと飛んできた。


「危ないですよ!!」

「いや、このくらいなら大丈夫だよ。」


私はそう言って笑った。

何だかこの若者の性格が段々と分かってきた気がした。


律儀で神経質で少しばかり心配性。


気は弱いかもしれないが、情の深い人間。


こんな息子がいたらどんなに幸せだっただろうか。

と床掃除に戻った若者を見ながらつい思ってしまった。
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