おじいさんと泥棒
「…どうかな?」
ようやく食べ始めた僕を見ながらおじいさんはにこやかに尋ねた。
「凄く美味しいですよ。」
素直に感想を言った。
「そうかい。」
おじいさんそう言って笑っていたが。
「…ところで君、こんな時間までここにいて大丈夫なのかい?」
ふと思い出したように僕に尋ねてきた。
「ええ。」
「ご家族などに連絡しなくていいかな?」
「一人暮らしですから。」
「結婚は?」
僕はこの質問に思わず笑ってしまった。
「まだ独身ですよ。」
「そうか、君はまだ若いからね。」
おじいさんは言いながら僕の隣にある空だったグラスにワインを注いだ。