おじいさんと泥棒
おじいさんは真剣な顔つきになっていたが、声の調子は相変わらず優しかった。
「仕事は?」
「…数週間前にリストラされました。」
「両親の元には帰らないのかい?」
「…家業を次がなかったので、父に勘当された身ですから。」
自分でもどうしようもない人間だと思った。
「…じゃあもう帰ります…。色々と有難うこざいました。」
僕は席を立って玄関に向かった。
もうこれ以上迷惑をかけたくはない。
僕が玄関への扉に手をかけた瞬間に
「…どこに帰るのかね?」
おじいさんの声が家の中に響いた。