おじいさんと泥棒


「おはよう。」

「おはようございます。」

向こうからやって来たのはあの若者だった。


「こんなところに居たんですね。」

私は私の座っている白い椅子とテーブルを見てそう言った。


「庭で紅茶を飲むのも悪くないからね。」


私がそう言うと若者は何故か悲しそうな顔をした。


それは昨日玄関の前で一瞬見せたあの泣きそうな表情と同じものだった。

どうかしたのかね?

そう尋ねるより先に若者は私に向かって頭を深く下げた。


「ごめんなさい。」

そして私が何も言わないうちに喋りだした。

「窓はトンカチで割りました。
お金と住むところがなくなったから思わずやってしまったんです。

僕は…

泥棒に入ろうとしたんです。」


若者は俯いたままだった。


私はあまりに正直な若者の言動にしばし呆気にとられていた。
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