天の川の涙
五代目、織姫の汐羅(キヨラ)は、一年前のあの日に植え付けられた疑惑が確信へと変わりつつあり、心が一つの感情に支配されていた。

早く、早く彦星に会える聖差の夜にならないかと指折り数えてはため息を繰り返した。

「まだまだね…」

「月日というものは、永いものでございます」

汐羅が消え入るような声で呟いた言葉に、返事が返ってきた。艶子(ツヤコ)だ。

艶子は、汐羅を赤子の時から育てている、乳母だ。

「聞いてたの?」

「…申し訳ございません」

汐羅は謝る艶子に目を向ける事もなく、鼻で笑って返した。

その後は、どちらとも話す事はなく、夜風が葉を揺らす音だけが響いていた。



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