その日の前夜~地球最後の24時間~
早百合は満たされない心をずっと抱えて生きてきている。何が満たされていないのかすら分からないのは飽食した時代ゆえだろうか?
こんなとき早百合は無性に誰かに抱きしめて欲しくなる。
それを求める相手は淳二だと分かってはいるのだが、それも何か違うような気がしていた。
「おい、今日お前ん家親父さんいるのか?」
仲間たちの会話から外れて淳二は早百合にそう耳打ちした。留守しがちな早百合の父親が居ない時は、朝まで早百合の家に入り浸ることが常だ。母親はとっくに離婚して遠くの地で生きていた。
「今日は駄目、家にいるよ」
「なんだ、つまんね」
春休みなのだから毎日朝まで遊び歩いているのだ、どうせ一緒にいるのには変わりは無い。わざわざ嫌なことが詰まった家には帰りたくないと早百合は思っていた。
(どうせ抱きたいだけ……)
最近の早百合の疑問。それは淳二が自分を抱く意味だ。
(あたしが欲しいのか……自分の欲望を満たしたいだけなのか……)
体の上で激しく動く淳二の目には自分が映っていないような気がしてならない。もっと自分を見て欲しくて演技をしてみても、その瞳からはますます自分が遠ざかってゆくような錯覚に陥った。
こんなとき早百合は無性に誰かに抱きしめて欲しくなる。
それを求める相手は淳二だと分かってはいるのだが、それも何か違うような気がしていた。
「おい、今日お前ん家親父さんいるのか?」
仲間たちの会話から外れて淳二は早百合にそう耳打ちした。留守しがちな早百合の父親が居ない時は、朝まで早百合の家に入り浸ることが常だ。母親はとっくに離婚して遠くの地で生きていた。
「今日は駄目、家にいるよ」
「なんだ、つまんね」
春休みなのだから毎日朝まで遊び歩いているのだ、どうせ一緒にいるのには変わりは無い。わざわざ嫌なことが詰まった家には帰りたくないと早百合は思っていた。
(どうせ抱きたいだけ……)
最近の早百合の疑問。それは淳二が自分を抱く意味だ。
(あたしが欲しいのか……自分の欲望を満たしたいだけなのか……)
体の上で激しく動く淳二の目には自分が映っていないような気がしてならない。もっと自分を見て欲しくて演技をしてみても、その瞳からはますます自分が遠ざかってゆくような錯覚に陥った。