その日の前夜~地球最後の24時間~
「はあ!?」

 興味本位だった目を鋭くさせ、その言葉に眉根をひそめるあさきち。証券マンも声を落とし、半ば嘆くように言葉を続けた。

「日本だけじゃない。ロシアも中国も、EU諸国もこぞって融資をしてんだよ」

「はあ~?」

 冗談じゃない。ただでさえ世界の富を独り占めしている印象が拭えない今のアメリカだ。それに引き換え、世界各国で不況が伝えられるニュースは後を絶たないのだ。

 それにしても何がどうなっているのやらさっぱり分からない。あさきちは当然その疑問を証券マンにぶつけた。

「俺にも分からないけどね、でも……」

「でも?」

「なんかとんでもないことが起きてる気がするんだよ」

 ここで小市民である自分たちがどんな疑問を浮かべたとて、世界の動きがどう変わるわけでもない。

(どのみち関係ないっしょ)

 その話は他の客に遮られて途切れを見せる。再び相次ぐ注文にあさきちは忙殺されることになった。
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