あたしの神様

その日の夕方、テレビに映し出されたあたしは、半狂乱で「郁を返して」と叫んでいるだけだった。
その瞳に涙はなく、血走った瞳と、疲労で荒れた肌。大きな隈。寝起きでセットしていなかったぼさぼさの髪。
テレビの中のあたしに、あたしは恐怖した。

もうこんな取材はやめてほしい、と。あたしが冷静に訴えた、前半部分はどこの局の番組を見ても、流されては居なかった。

彼らが欲しかったのは、あたしなんかじゃない。ましてや、本物の郁ですらなかった。

10年前に両親を交通事故で失い、双子の姉と身を寄せ合うようにして暮らしていたあたしが、最愛の姉さえも凶刃のもとに失ってしまう。

あいつらが欲しいのは、そんなストーリーの中にあるあたしと郁の姉妹愛だけなのだ。



あたしが、冷静で居られなくなったのは投げかけられる無神経すぎた質問のせいだ。それさえも彼らの罠だったのだろうか。

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