あたしの神様


「どうして郁だったの」

桐原は何も言わなかった。
あたしも、桐原に何を求めていたわけでも、きっとなかった。

「誰でも良かったのなら、なんで郁を選んだの!あたしには郁しかいないのに!何で郁を―――」


例えば、最後に犠牲になったのが、郁じゃなかったら。
あたしと郁は、当たり前にテレビの前で怖い事件だねって、そう話してたに違いなかった。

そんな、当たり前のはずの平凡を、あたしと郁の幸せが、今あたしの目の前に、広がらないのは、何でなの。



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