あたしの神様
「――――――――ふざけないでよ」
「お前、しっかり化粧してる割に、目元だけ何もしてないんだな」
空いた右手で、あたしの左頬を撫でながら、桐原は目を細めた。
その切れ長の目が、チェシャ猫のようになって、愉悦に染まる。
「…………あんたなんて、大嫌い」
「ああ、おれも嫌いだよ」
郁がいなくなってから、あたしはどうしてもアイラインが引けなかった。
そんなことしても何も変わらないのは分かってた。
でも、あたしには、どうしても引くことはできそうになかった。