あたしの神様
携帯電話が鳴って、あたしはようやくテレビを消そうと思いついた。
わざとらしい沈痛そうな表情の司会者が話す郁は、きっと偽者だ。
リモコンの電源ボタンを押すだけで、偽者の郁はあたしの目の前から居なくなった。
その間もチャイムは鳴り続けていた。
すべてが、小説の中の出来事のようにも思えてしまう。
「―――――はい、」
「高沢さんですか?警視庁のものですが、あなたのお姉さんを殺害したと思われる容疑者が、昨夜逮捕されました」
あたしはそのとき、何も感じなかった。
唯、目の前が真っ暗になっただけだった。