君が為に日は昇る
「ねぇ。また生きて会えるのかなぁ…。」


高々と打ち上がった花火が二人の顔を照らし出す。


祭り囃子も、人々の声も、虫の音色も。


全てがそれぞれの別れを惜しむような。切なく、悲しい歌。


「ねぇ?もし戦が終わったらさ。…黒間の村に行こう。」


彼女は太陽だった。

暖かな光は植物を育てるように、大切な人を優しく包み込んだ。


灼熱の光は大地を枯れさせるように、彼女を悲運へ導いた。


「ああ。」


彼は月だった。

柔らかな光は暗い夜道を照らすように、大切な人を守ろうとした。

冷たい光は全てを貫くように、彼を戦いの地へ駆り立てた。


「それでさ。皆のお墓立ててさ、また黒間で暮らすんだ。」

「うん。」


「あ、勿論お稲婆ちゃんも一緒だよ!」

「わかってる。」

「それでさ!それでさ!」

「お雪。」

「え?」


春は喜び、夏を怒り、秋に哀しみ、冬を楽しみ。


鮮やかに色付き、豊かに実り、静かに散り、次の芽吹を待つ。


幾年もの四季を重ねる間、太陽は月を想い、月は太陽を想っていた。
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