君が為に日は昇る
「手紙、書くから。」

「字書けないじゃん。」

「それでも書く。」

「あたしも読めない。」

「読んでもらえ。」

「じゃあお婆ちゃんに読んでもらう。」

「ああ。」

「…ねぇ夜太?」

「ん?」

「幸せだった?」

「…ああ。」

「本当に?本当の本当に幸せだった?」

「ああ。ずっとね。…今も、これからも。」

「…そっか。」

「だからまた。帰ってくるから。」

「うん。」

「二度と一人にしないから。」

「うん。」

「約束するから。」

「…うん。」




━だからもう泣かないで。俺の大切な人。





月は太陽を優しく包み込みその灼熱を冷やす。


太陽は月を照らし冷たい光を暖かく変える。


二つで一つの。未完成な太陽と月は、静かに重なりあう。





「馬鹿な子達だよ…。本当に…。我慢ばっかり…。」

「なぁ源や…。なんであたしみたいな老いぼれが生きて若い子が苦しまなきゃいけないのかねぇ…。」

「どうか、どうか、あの子達を守ってやっとくれ…。」

「この老いぼれの命と引換えでもいいから…。」

「どうか…。」





そして再び、時代は静かにその針を刻みだした。

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