君が為に日は昇る
言葉と同時に狼は大地を蹴る。
卓越した脚力で一足、東雲に接近。その間合いは一瞬で詰まった。
生まれた加速を刀に乗せ、放つのは鎖骨を狙った上段から打ち下ろす袈裟斬り。
風を切り裂く研ぎ澄まされた狼の爪。
猛然と迫る刀を前に、東雲は僅かに横に動く。狙うは技を出し終えたその時。
己に爪が届く寸前の位置でそれを避ける。そこはまだ間合いの中。
相変わらず構えは取らない。左足を前、右足を後ろ。腰を回転させる。
上半身の力を刀に乗せ、放つのは心臓を狙った平突き。
生まれる閃光。
瞬時に反応した奥村はその脚に全力を込め斜め後方、間合いの外へ飛び退く。
避けた後に奥村は錯覚した。その一撃が自らが居た場所を通り抜けた時、全てが消しとんだのではないかと。
━何という剣か。これが稀代の剣豪、東雲平馬。
刹那の攻防。それだけで奥村の額には大粒の汗がいくつも流れる。
しかしそれはまた、東雲も同じことである。
━強く、速い剣を使う。流石に幕狼ということか。
そして互いに思う。
『この男、一筋縄でいく相手ではない。』
それでも二人は再度間合いの中へ向かう。
卓越した脚力で一足、東雲に接近。その間合いは一瞬で詰まった。
生まれた加速を刀に乗せ、放つのは鎖骨を狙った上段から打ち下ろす袈裟斬り。
風を切り裂く研ぎ澄まされた狼の爪。
猛然と迫る刀を前に、東雲は僅かに横に動く。狙うは技を出し終えたその時。
己に爪が届く寸前の位置でそれを避ける。そこはまだ間合いの中。
相変わらず構えは取らない。左足を前、右足を後ろ。腰を回転させる。
上半身の力を刀に乗せ、放つのは心臓を狙った平突き。
生まれる閃光。
瞬時に反応した奥村はその脚に全力を込め斜め後方、間合いの外へ飛び退く。
避けた後に奥村は錯覚した。その一撃が自らが居た場所を通り抜けた時、全てが消しとんだのではないかと。
━何という剣か。これが稀代の剣豪、東雲平馬。
刹那の攻防。それだけで奥村の額には大粒の汗がいくつも流れる。
しかしそれはまた、東雲も同じことである。
━強く、速い剣を使う。流石に幕狼ということか。
そして互いに思う。
『この男、一筋縄でいく相手ではない。』
それでも二人は再度間合いの中へ向かう。