君が為に日は昇る
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」


大地を踏みしめる強靭な右足。奥村が動く。


僅かに存在した間合いを押し潰す気迫。殺気。


四肢が千切れ消えても構わぬと、可動域の限界まで振り上げる腕。


腕の振り一つ。足運び一つ。どれを取っても己には出来なかった。


そしてこれからもこれほどの一太刀を放てることなどないであろう。


━我が、最高の一撃。


受けるか。捌くか。回避するか。様々な選択肢が東雲の頭に浮かぶ。


未だかつて此処までに強く、速い刃を見たことがあっただろうか。否、無い。


受けきれぬだろう。捌ききれぬだろう。


そして、避けきれぬだろう。


耳に忍び寄る死の足音。


━この俺が死ぬか。


眼に映る死神の姿。


━だがここで死ぬのは大久保殿に、真田に、同志達に申し訳がたたんのだっ!


全神経を研ぎ澄ます。


眼も、腕も、足も、その五体全てを回避。


ただそれだけに集中させる。


迫る刃。






━……………っ。


それは東雲の左肩に深々と突き刺さり、そして。


その腕を空高く、舞い上がらせた。


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