君が為に日は昇る
━見事…。


決着は訪れた。


より強き者が勝利し弱き者が敗れ、運を味方につけた者が勝利し運を敵に回した者が敗れる。


勝利は生を与え、敗北は死をもたらす。


これでまだ戦うことが出来る。約束を果たすことが出来る。


その手に生を握り締めたのは、奥村。






「見事なり…!東雲栄馬…!」


ではなかった。


斜め一閃。逆袈裟にはっきりと刻みこまれた傷に、溢れ出す鮮血。


それは間違いなく、死に至る傷。


おぼつかない足取りで一歩、二歩と後ろに下がると力尽きるように奥村は両膝を落とし跪く。


━…左腕を斬られてもなお変わらぬ、強靭な一太刀…。

━否、元々左腕は犠牲にするつもりであったか…。

━今となってはどうでも良いことだ。

━ああ…。私は、負けたの…だな。


口の中に広がる鉄の味に、死が近づいていることを再度確かめる。


「見事なのは、あんたの方だよ。」


走る激痛に東雲は顔をしかめた。


「強い。あんたは間違いなく強かった。生涯最強の敵だったよ。」


もう二度とやりたくないね、と残る右手で血に濡れた髪をかきあげる。


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