君が為に日は昇る
「…大久保殿。見ているかい。」
左腕の付け根に巻かれた白い包帯は激戦の痕を物語る。痛みの残る肩にそっと手を当てた。
東雲は一人、友の散った場所に足を運んでいた。
見れば、かつて戦場となった場所で兵達が酒を飲み、歌い、騒いでいる。
「我々は勝ったぞ。残るは天府のみだ。」
「もうすぐ時代が変わる。変わるんだよ。」
「民が理不尽に苦しむことの無い時代になるんだ。」
本当は泣きたくて喚きたくて仕方がなかった。
しかしそれを兵に見られれば士気に関わる。彼の立場はそれを許さない。
左腕が無くなったことよりも、友の為に堂々と泣けぬこと。
それが何よりも痛く、苦しくて仕方なかった。
「大久保殿。俺は最後まで戦うよ。」
「例え両腕が無くなり、足が千切れ、眼が潰れても。」
「命がある限り戦う。そしてあんたの夢見た時代を実現して見せる。」
「だから、だからさ。戦いが終わったら。」
「戦いが終わったその時は。」
「泣いても、いいだろ。」
『其の壱、天地の争』
終
左腕の付け根に巻かれた白い包帯は激戦の痕を物語る。痛みの残る肩にそっと手を当てた。
東雲は一人、友の散った場所に足を運んでいた。
見れば、かつて戦場となった場所で兵達が酒を飲み、歌い、騒いでいる。
「我々は勝ったぞ。残るは天府のみだ。」
「もうすぐ時代が変わる。変わるんだよ。」
「民が理不尽に苦しむことの無い時代になるんだ。」
本当は泣きたくて喚きたくて仕方がなかった。
しかしそれを兵に見られれば士気に関わる。彼の立場はそれを許さない。
左腕が無くなったことよりも、友の為に堂々と泣けぬこと。
それが何よりも痛く、苦しくて仕方なかった。
「大久保殿。俺は最後まで戦うよ。」
「例え両腕が無くなり、足が千切れ、眼が潰れても。」
「命がある限り戦う。そしてあんたの夢見た時代を実現して見せる。」
「だから、だからさ。戦いが終わったら。」
「戦いが終わったその時は。」
「泣いても、いいだろ。」
『其の壱、天地の争』
終