君が為に日は昇る
狼は、その大きな牙を剥き、鋭い爪を輝かせ、一歩、また一歩と街に迫っていた。


真紅の羽織をはためかせ、一糸乱れぬ隊列を成す。


その数、三百名。


幕府最強最悪の看板を背負い、駆け抜けた戦場。


ただ人を斬って、斬って、斬り続けてきた人斬り集団は満ち溢れる自信と狂気を漂わせ。


今、富水の間近に到達した。


「さぁ、お前ら。準備はどうだい?」


狼の先頭に立つ男。最強の狼。新海勇は訪ねた。


狼達は沈黙する。それは肯定の合図。


早く戦わせろと。早く人を斬らせろと。殺気立つ狼。


「そうか。すまん。愚問だったな。陸野、調査の結果を。」


もう一人、狼の先頭に立つ男。最凶の狼。
陸野歳輝は紙を手に淡々と話出す。


「相手の数は四百。餓鬼や老人、怪我人。寄せ集めの兵ばかりだ。」

「有名所は真田、上条ぐらいか。二人以外は無名の粕ばかり。」

「二人には注意しろ。かなりやる。」

「火器の類はねぇ。準備期間が足りなすぎる。」

「つまり、大したことねぇ糞共ってことだ。」


最後に馬鹿にしたように笑うと、その紙を破り捨てた。


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