君が為に日は昇る
彼等は予め、富水の調査をし、その戦力を完全に把握していた。


周到で狡猾。それでいて、腕も一流。


彼等が、最強の名を轟かせるのはここに理由があるのかもしれない。


「聞いたか。残念ながら相手は雑魚らしい。」


おどけたような仕草で笑いを誘う新海。その素振りには余裕すら感じる。


「お偉いさんは命運を賭けた戦いだとか抜かしたが、話にならねぇ。」


高まる、殺気。


「これは狩りだ。虐殺だ。殺戮だ。」

「一匹も逃すな。一匹も生かすな。全てを焼き付くせ。」


溢れ出す狂気。


「奴らだけじゃねぇ。近くの集落にゃ住民が逃げこんでやがる。」

「富水の次は奴らだ。そこで終わりにしてやる。」


圧倒的な狂気。明確な殺意。狼達の高ぶりはもう爆発しそうな程膨れ上がっていた。


新海は高々と右腕を掲げる。狼達もまたそれに応える。


「祝杯をあげよう。奴らの血でな。」


そして狼は咆哮する。


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


三百の狂気の咆哮が富水に向け響き渡った。
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