君が為に日は昇る
笑いがこみあげる。


━やっと…!


興奮が止まらない。


━やっと…!


殺気が抑えきれない。


━やっと来たぞ!この時が!


待ちに待ったのは収穫の時。青く渋味の残る果実が鮮やかに色付き、甘い香りを漂わせる時。


壊れやすい脆い玩具は強固になり、精密に作り変えられていることだろう。


━ずっと待っていた。


永遠にも感じた短き時間、どれだけの人間を斬り臥せたか。


天府に隠れ潜んだ連合の兵。幕府に逆らう愚かな民。


誰を斬っても充足感は得られなかった。


全てはこの時の為に。


━斬りたい。


一刻も早く。


━斬り合いたい。


永遠に。


━早く!早く!


彼の白眼は赤く充血し、恐ろしい輝きを魅せる。


もしも伝説に名高い鬼や悪魔が存在したのであれば、彼のような顔をしているのだろうか。





両雄は出揃い、始まらんとする決戦。


それは凄惨なものになるであろう。それは多くの死をもたらすだろう。


誰も知らなかった、侍達の戦い。


侍達の生様が、そして、死様が、今、交錯しようとしていた。


< 131 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop