君が為に日は昇る
━政次。貴方は走り回って所定の位置まで敵を引き付けて下さい。

━我々より少数とはいえ彼等は精鋭。数を減らさなければ勝目はありません。


「なんて言ってもよー!こりゃ楽じゃねぇぞおい!」


いくら上条でも十人相手にするのは容易くない。


ひたすらに駆ける。走る。逃げる。


追い付かれればそこに待つのは死。無様に逃げ惑った挙句に斬られるなど絶対に御免だ。


息を切らし汗を撒き散らしたどり着いたのは行き止まり。


人二人分程の狭い路地。低い軒先が圧迫感を感じさせる場所だ。


行く先を壁に阻まれ立ち尽くす上条。


その後ろではようやく追いついた隊士達が肩を上下させ抜刀している。


「はぁ…はぁ…。あちこち逃げ回りやがって…!覚悟しろこの野郎!」


怒声があがる。十人の隊士がこの細い路地で縦一列に並ぶ形になった。


多人数で一人を狙う時、決して狭い場所で戦うのは愚かな行為である。


それはその地形によって数の利が存分に活かせなくなるというのが大きな要因だ。


しかし実力に大いに自信のある幕狼隊士はそれを意に介さない。


そこが狙いであった。


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