君が為に日は昇る
幕府軍の騎馬が動き出す。蹄の振動は次第に地響きのようになっていく。


「ははっ。見事に騙されてくれた。あいつら無事に山を越えてくれたかねぇ…」


死ぬつもりなどない。生きて再び家族と会いたい。その為の策。


家族を逃がし、俺達も逃げる。これが最高で最良の結果だ。


空を仰ぎ見て、深く、大きく息を吸い込んだ。
目の色が変わる。

「固まって離れるなよ!合図で突っ込むぞ!」


緊張が高まる。槍、刀、皆それぞれの武器を構え、その時に備える。

地響き。

━まだ。

地響き。

━まだ。

地響き。

━今!!

「突撃ぃぃ!!しっかり付いてこいよ敵の腹を食い破るぞ!」


そして両軍が激突した。


そこら中から聞こえる剣撃と悲鳴。傷つき、倒れる男衆、幕府兵。


「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


両の腕に力を込め、長槍を振るう。
騎馬兵を叩き落とし、歩兵を突き刺し、薙ぎ払う。


突進の勢いこそ弱まったものの着実に、源五郎達は敵の軍勢の中を突き進んでいく。





人壁の向こうに光が見えた。男衆はもう半分程に数を減らしているがこれなら突破出来る。


源五郎は渾身の力を込め長槍を振るった。


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