君が為に日は昇る
「関係ないな。元より真田が新海に勝てるとは思わん。貴様が俺に勝てないようにな…!」


凍てついた空気を溶かすのは地獄の業火。狼は赤黒き血にまみれた野太刀を彼に向ける。


「そうか…。ならば気兼はいらないな。」


彼はゆっくりと立ち上がり、蒼き鞘から刀を引き抜く。


「あんたはここで死ぬ。俺と共に舞台から姿を消すんだ。」


最後は真田が舞台に立っていればいい。吸い込まれるよう眩い光を放つ刀。


「ここで終わらせよう。長い、俺達の戦いを。」


黄金の月が露にしていく彼の姿。血まみれの姿。それは戦いに満ちた生涯のように。


「ああ。貴様の死をもってな…!そして俺はこれからも斬り続ける!」


黄金の月を真紅に染めんとする姿。彼もまた血にまみれた姿。それは戦いに満ちた生涯のように。


二人の姿は、何故か重なって見えたのだ。






「さぁ、斬り合おうか。」





全ての因縁に終止符を。


誰も知らない戦いが此処で始まり、そして終わる。


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