君が為に日は昇る
徐々に荒くなる息遣い。とめどなく流れる汗。


互いに激しく消耗しているのが見てとれるようだ。


全く動きの無い戦い。にも関わらず、周囲の兵は沈黙を守っていた。


眼をそらすことが出来ない。言葉が出ない。それは余りにも次元が違う戦い。


まばたきすら勿体無く感じる。この戦いをいつまでも見ていたい。


何時しか兵達は、各々が一人の剣士として二人を眺めていた。


「ちっ…!そろそろ離れろよ…!」


痺れを切らしたのは新海。横顔で止めていた刀を片手に持ちかえ真田に突き立てんとする。


「…それもお互い様ですねっ!」


真田は刀を持った新海の左腕。そこに掌底を撃ち込んだ。


剣の軌道をそらし逆に喉元に突きつけていた刀を真っ直ぐ押し進める。


しかしそこに新海はいない。掌底を受けた衝撃を利用し回転。


跪きながら脇腹を横薙ぎに払う。しかし真田も負けてはいられない。


一足で跳躍。斬撃の上を跳び越えながら上段から刀を打ち下ろす。


後ろに体を傾けながらそれを避ける新海。更に真田は追撃せんと打ち下ろしから両手突きに切り替えた。


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