君が為に日は昇る
「…そう、ですね。」


荒くなった息を整えながら返す言葉。まるで慈しむかのような瞳。


それは新海をじっと見つめていた。


「返し技か。まさかここまで綺麗に決められるとはな。…原因は、あの時の掌底か。」

「…剣の威力が落ちていなければ、立場は逆になっていたでしょうね。」


真田は新海の一撃を、斜めに構えた刀身を上で走らせた。


角度が甘ければ刀は折れていただろう。威力が強ければまた、同様だ。


それがどんなに高等な技術であったのかは、剣に生きるものであれば解り得るだろう。


刀身を走り、行き場を失った刀は虚空へ。がら空きになった新海の胴を、真田は一閃。斬り裂いた。


ざわめきが起こる。新海の後方で待機していた幕狼の面々だ。


大将がやられても未だ数では互角。真田がいるとはいえまだ戦況を返せない状況ではない。


「む…。」


連合の面々が身構え迎撃の準備を始める。


だが彼らは各々何かを示し合わす訳でもなく、得物を地に置いた。


それは降参するという意思の表れ。


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