君が為に日は昇る
連行されていく幕狼の面々を眺める。皆真っ直ぐに前を見据え、敗北を何一つ恥じることはないという表情をしている。


潔い。彼らもまた侍なのだ。新たな時代を認められず消えゆく、悲しい存在。


「終わったな。」


不意に、後ろからかけられた声。やけに懐かしく感じる声。


「政次…。ぼろぼろじゃないですか。片目も。」

「お前も似たようなもんだろ。立っているのがやっとって感じだぜ。」


互いに顔を見合わせて笑う。久々の安心感。


方々の続いていた戦いは連合の勝利に終わったようで、次々に捕縛された幕狼の隊士が集まってくる。


「時代が、変わるか。」

「…ええ。後は、彼が戻ってくるのを待つだけですよ。」

「戻ってくるよな。」

「さぁ。わかりませんね。」


兵が誰ともなく叫ぶ。


「見ろ!夜が、明けるぞ!」


それは美しい朝焼けの光。時代の変革を決定付けるような、闇を裂く光。


「…けれど。彼は、強いですから。」


全てを包む、夜明けの光。





━ねぇ、源五郎。





『其の弐、夜明けの光』





< 178 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop