君が為に日は昇る
━さぁ。終わりにしよう。俺を待っている人がいる。


思い浮かべる姿。もうすぐ皆と再び会える。眼前の巨大な狼の姿をしっかりと見据えた。


━…先手必勝!


踏み出したのは同時。しかし後手にまわったのは陸野。幾重もの稲妻が彼を襲う。


やはり速さ手数では夜太に軍配があがる。刃がぶつかり合い飛び散る火花。


振るおうとした野太刀を陸野はとっさに防御に変える。しかし、彼にもまたその速さを帳消しにする武器がある。


「がぁっっっっ!!」


全力で後方まで飛び退いた夜太の回避行動もあながち大袈裟なものではないのだろう。


袈裟斬り一閃。剣先からその遥か先までえぐりとるが如く。


響き渡る狼の咆哮に背筋を走る悪寒、吹き出す汗。


━なん、だ。


彼は不意に、陸野の身体から黒い煙のようなものが溢れだしているのを見た。


それは徐々に膨れ上がると、じわじわと夜太に近づいてくる。


━飲み、込まれる…。


朝焼けで光が射していたはずの辺りはいつの間にか暗闇に染まり、まるで夜に戻ったかのようだ。


一瞬、夜太の身体が後ろに揺らいだ。


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