君が為に日は昇る
━何やってんだかなぁ。随分やわになったじゃねぇかおい。


闇に堕ち、薄れ行く意識は徐々に暗闇に飲み込まれた。


しかし彼がその中に見たのは懐かしいあの姿。とても懐かしい、あの姿。


━ああ。なんで。

━なんで貴方が。


そこに居たのは、亡き父。確かに源五郎がそこに立っていた。


━よお。…久しぶり、だな。


あの時と変わらぬ、姿に。


━元気、じゃねぇよな。大分やられたみたいだ。


何も話すことが出来ないのは、ただ精一杯で。


━ぼろぼろじゃねぇかお前。


あの時と変わらぬ瞳に。


━しんどかったろ。辛かったろ。お前は優しいからなぁ。


あの時と変わらぬ笑顔に。

━ありがとなぁ。お雪をずっと守ってくれてたんだよな。


涙を堪えることにただ、精一杯で。


━でっかくなったなぁ。夜太。


もう堪えることが出来なくて。


彼の暗闇に、大粒の涙が溢れ落ちた。


━せっかく会えたのになんだけどよ。


━夜太お前は、まだこっちに来ちゃいかんだろうが。

━まだ死んじゃいかんだろうが。


涙は広がり、その暗闇を徐々に晴らしていく。


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