君が為に日は昇る
━お前を、待ってる人がいる。


小さな光。白く、小さな光。


━だから、お前はこっちへ来てはいかんのだ。


少しずつ広がる。少しずつ、少しずつ。ゆっくりとゆっくりと。


黒は、白に包み込まれるようにその姿を消していく。


━なぁ。お前は誰に育てられたんだっけか?


そうして全ての闇は、消え去った。





「…おいおい。とんでもねぇ邪魔が入ったなぁ。」


言葉とは裏腹に愉快そうに口角を歪ませるのは、余りにも呆気無く終わった死合い。


「丁度いい。まだ腹が満たされてねぇんだ。」


それが新たに始まる予感に、喜び打ち震える心の表れか。


「相手しろや。爺。」


眼前で渇いた音をたてて軋む刃の先。鈍い光を放つそれは夜太の首筋を若干に切り裂いたに留まる。


それはそれより手前にいた一人の男。


喜八が差し出したる一振りの刀により防がれていた。紺色の鞘がひび割れ中からは白刃が顔を覗かせている。


「無論、そのつもりじゃ。」


深い皺が刻まれた顔面に光る鋭い眼光。反射的に身を退く陸野。


下がれ。まるでそう言われたような。


気迫。


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