君が為に日は昇る
爆発的に高まる殺気。瞬時に覚えたのは全身の毛が逆立つような感覚。


━なんだ…!


過去に見たことがある。まだ自分が幼い頃に。


男はその技を持ってしてもの幾度となく戦いに勝利してきたこと。


その太刀を自分が眼で追うことすら出来なかったことだけは、はっきりと覚えている。


喜八の今の姿が一寸の狂いもなく、あの頃と重なる。


間違いない。ここから来るのは、必殺の一太刀。


━来るっ…!


歯を食いしばれ。身体を動かせ。全神経を回避一点に集中させろ。


構えは刀が背中で隠れるほどの大上段。袈裟か、兜割りか。いずれにせよ振り下ろしの一太刀。


瞬時に頭に浮かぶ、様々な対応策。いずれの技がきても凌ぎきる自信。


「っ!?」


しかし刀が出てきたのは何故か、中段からだった。


居合い斬りのように腰から現れた刀。頭上にばかり注意を払っていた陸野の反応が遅れる。


━間に合わん!だがかわせぬ速さではない!


陸野の身体を横薙に通過したそれ。刻みこまれたのは胸元。うっすらとした赤い一本線。


「おおっ!!」


休ませなどするものか。このまま終わらせる。


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