君が為に日は昇る
━中々面白い技だな爺。


種の検討はもうついている。背中で刀を離して持ち変えただけのこと。


だが剣の出処が不明確な故に反応がどうしても後手に回ってしまうという訳だ。


ただそれは類稀な技術が有り、同時に剣を手放すことで無防備になる大きな危険を伴う。


容易な芸当ではない。まさに妙技と言えよう。


━それでこそ、それでこそだよなぁ。


迫りくる喜八を見て陸野は刀を頭上に構える。


━殺しがいがある。


次に繰り出すのは上段か、中段かはたまた下段か。


恐らく喜八であればどこからでも技を繰り出すことが可能に違いない。


━堪らねぇ。


だが、関係ない。


━堪らねぇよ。


どこへ打ち込んでこようとも。どんな剣を使おうとも。


━てめぇを斬りたくて、身体がうずきやがる。


男が放つの全てを砕く一撃。


━うずいてうずいて!堪らねぇんだよ!


全身に宿した狂気をぶちまけ、喜八を迎え討つ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


空気を震わす怒声を張り上げ、先に仕掛けたのは喜八。その妙技が繰り出されたのは、下段。


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